
お知らせ


IT技術で建設DXを促進
2022/9/15
当社は2018年度から継続して、大成建設株式会社など7社で構成する技術コンソーシアムの一員として、 政府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」において「クラウド上で共有した動画を含む生コン情報のCIMモデル連携」に取り組んでいます。
この取り組みが2022/9/15に ワールドビジネスサテライトで 『どう変わる?働き方 建設現場で驚きの「革命」』 と題し放映されました。
概要
フレッシュコンクリート(生コン)の品質指標として,スランプ(SL)値やスランプフロー(SF)値が存在します。 従来、建設現場においては生コン車1台毎のスランプや単位水量などの品質情報を、複数名の立ち会いのもと人手で計測し、判定、記録していました。これらを測定には人手によりスランプコーンなどの器具を使用する必要があり,多くの動員を要することが課題となっていました。

図1 : スランプコーンによるコンクリートの状態測定
建設作業のDXに取組む当社は、シュートを流れるコンクリートの画像から荷降ろし時のスランプをリアルタイムかつ高精度で推定する技術開発を行い高い精度でスランプの推定を可能としました。
期待するメリット
- ・複数名の立会を不要とし人員を削減
- ・従来はサンプル数が限られていたものをリアルタイムに測定し、CIMシステムへのデータ転送が可能
取り組み
まず、現状のスランプ測定をどのようにAIで測定すると現場の負担が削減できるのかから検討を開始しました。測定のための操作は増やしたくないと考え、ミキサー車から流れ落ちるところを測定するPoC(Proof of Concept)を作成し、実際の現場でのデータ取りと検証を行いました。

図2 : シュートを流れるコンクリートを測定
PoCの評価結果として、以下のような課題があることがわかりました。
- ・逆行、順光 様々な測定環境の変化が大きく既存アルゴリズムでは精度良く計測できない
- ・カメラ台に車両の振動伝わったり、作業員がぶつかることで誤検知が発生する
- ・SL/SF値と流速は流量が同一であれば比例関係にありますが,SF値が約40cmを超える高流動生コンの場合,SF値に対して流速は比例しま
- せん。これはシュートとの接触面における粘着性が高くなり、流動に対する抵抗性(コンシステンシー)が大きくなるためです[1]
これらの課題を解決するために、オプティカルフローを基本としたSL/SF値の推定アルゴリズムの改良を重ねました。
- ・排出量に影響されない流量補正方式で普通コンクリートのSL/SFを高精度で推定する。
- ・シュート端部とシュート中央部の流速差を利用して高流動生コンにおけるSL/SF値を高精度で推定する。
- ・動き量が0となるオプティカルフローの数を利用して振動を推定する検出器を作成。
- ・逆光/フレア時のコントラスト低下をSF値に着眼してチューニングする。
実験を重ねることでアルゴリズムの改良を行い、普通コンクリート、高流動生コンのSL/SF値を、環境変化にロバスト かつ 高精度に推定可能なアルゴリズムを開発することができました。
- ・処理フロー
- 1.ミキサー車のシュートに固定したカメラで、流れるコンクリートの動画を撮影する。
- 2.ノイズ除去等各種画像処理後、
- 3.コンクリートの流出速度を画像認識により推定する。
- 4.推定した流出速度から、機械学習によりスランプフローを推測する。

図3 : 処理フロー

図4 : 動作環境
評価
今回 開発したSL/SF値推定アルゴリズムの有効性を証明するため、普通生コン及び高流動生コンの流下動画像を使用して、JIS規格で定められた許容差内に収まっているかを評価しました。
評価結果として、普通生コンは評価データのすべてが許容差内に収まり、高流動生コンについても許容差内に収まることが確認できました。
おわりに
今回開発した SL/SF値の自動推定システムを構築することにより、スランプ試験の簡略化・省人化と推定結果の電子化による管理の効率化が期待できます。 当社は、コンクリート工法のさらなる作業効率向上に向け、より一層の利便性を提供できる技術開発を目指してまいります。
参考文献
[1] 大友ほか、スランプ領域から高流動領域までの流動性を有する高性能AE減水剤を用いたコンクリートのコンシステンシー評価に関する研究、土木学会、コンクリート用化学混和剤の性能評価シンポジウム, pp.1139-1144, 2002