導入事例 – IDEC株式会社様
―― 過酷な現場でも正確に動くナビゲーション
IDEC株式会社様が販売する安全自律走行ホイールSWD(Safety Wheel Drive)を活用したAMRの開発キット「SWD Build KIT」 (以降は「SWD Build KIT」)は、パナソニック アドバンストテクノロジーの自律移動ソフトウェア「@mobi」が採用されています。
SWD Build Kitは、直感的に操作できる@mobiのGUIと、ラダー言語からも制御できるようにしたIDEC様の独自開発のソフトパッケージが含まれた開発キットで、AGV/AMRの導入を容易にします。@mobiはロボットにとって過酷な環境でも誤差を抑え、安定した自己位置推定によって正確にゴールに停止できる信頼性が評価されています。
@mobiは「現場でもすぐに使える」と高く評価され、IDEC様と共にさまざまな自動化の現場で活躍の幅を広げています。
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日時: 2025/7/23
場所: IDEC本社
•IDEC株式会社 小松優様
•聞き手: パナソニック アドバンストテクノロジー株式会社(PAD)
はじめに:IDECと@mobi
(PAD) 本日はお時間いただきありがとうございます。最初に、IDECさんと我々@mobiの関わりについて整理させてください。 IDECさんは「SWD Build KIT 」という搬送ロボットキットを販売されていて、そのナビゲーションソフトとして我々の自律移動ソフトウェア「@mobi」を採用いただいていますよね。 さらに、工場などに導入する際には、現場の方が普段から馴染みのあるラダー言語で直接@mobiを操作できるようなソフトウェアもご提供されています。
(IDEC株式会社 小松様) はい、その通りです。SWD Build KIT 単体で売るだけではなく、制御面での支援も必要になります。 ナビゲーション部分を@mobiで担い、さらに現場の方にとって扱いやすい形にするために、我々がラダー言語と繋ぐ仕組みを提供しています。 これによって導入のハードルがぐっと下がりました。
実際の販売現場でのサポート
(PAD) 実際の販売の際に、小松さんご自身が現場に立ち会うことは多いですか?
(小松) はい、GUIの操作方法などはサポートしています。ただし、ROSのパラメータまでは触らずに済んでいます。 基本で用意されているルート生成などのGUIが非常に使いやすいですし、加えてIDECが提供しているソフトウェアを経由すればラダー言語から操作できます。
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ラダー言語との親和性
(PAD) @mobiが動作するタイミングなどはラダー側でコントロールしているのですか?
(小松) そうです。@mobiのWeb APIのインタフェースをラダーに落とし込む形で実装しています。 サンプルプログラムも用意しているので、それを参考にしてお客様自身が「到着時に何をするか」といったアクションを自由に作れるようになっています。
従来ソフトとの違いと採用の決め手
(PAD) 従来のAMRでは同じようなことはできていたのでしょうか?
(小松) 従来は難しかったです。ナビゲーションソフトの中身がブラックボックス化されていて、拡張性に乏しかった。 PLCで使えるナビゲーションソフトもありましたが、機能追加にはメーカーに要望を出してから2年後に反映される、といったケースもありました。
(PAD) なるほど。他社のソリューションでは、そうした小回りが利かず、導入しても眠ってしまうケースがあると聞きます。
(小松) 確かにそうです。我々はハードウェアをオープンで提供するという考え方を持っていたので、@mobiの「オープンにどんな台車でも繋がるソフトウェア」という方針と合致しました。 当初はSWD単体で売ろうとしましたが、ROSパッケージだけでは使える人が限られていました。
最終的に複数候補の中から@mobiに決まったのは、自社工場での実証実験が大きかったですね。 床が滑りやすい過酷な環境でテストしたところ、 複数試した他のソフトではホイールが空回りした際に、車輪オドメトリが狂って自己位置精度が大きく低下したため、ロボットはゴールに到達できませんでした。 一方で@mobiは、安定した自己位置推定ができていてゴール位置に正確に停止することができました。
(PAD) そうだったのですね。LiDAR/IMU/車輪のエンコーダ情報をそれぞれ補正して精度を高めているので自律移動ロボットにとって過酷な環境での位置精度には自信があります。
現場からの評価とROS利用の壁
(PAD) お客様の評判はいかがですか?
(小松) GUIが直感的で操作しやすく、SLAMの精度も高いため、とても好評です。ロバスト性については他社と比較しても高い評価をいただいています。Navigation2も試しましたが、安定性や精度の面で大きな差を感じました。
※ SLAM: Simultaneous Localization and Mapping ロボットが周囲の環境を認識しながら自己位置を推定し、地図を作成する技術の総称。ここでいう「精度」とはロボットの位置精度のことを指しています。
※ ロバスト性:一般にロボットは事前に作成した地図とのマッチングにより自己位置を推定するため、モノを置くと自己位置を見失うが、@mobiはモノを追加で置いても正確に自己位置を推定する機能があります。
※ Navigation2: ROS2で一般的に用いられるオープンソースのナビゲーションソフトウェア。
(PAD) 実際に使われているのはラダー経由が多いですか?
(小松) はい、7割ほどはPLC(ラダー)で使いたいというお客様です。残り3割はROSで直接開発されていますが、OSSのライブラリを使って一からROS環境を勉強して開発するのは課題も多く、最終的に諦められるケースも少なくないです。
(PAD) なるほど、工場の他機器との連携が必要な場合にラダー対応が効いてくるわけですね。
(小松) まさにそうです。工場の現場では安定性と連携性が大事なので。 また、ROSを使いたいというお客様も、ROSによるナビゲーションの全部を自身でやり切るのは難しいけれど、ROSの先進的なところを使えるところが安心感につながっていると思います。
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コスト・タイムパフォーマンスと導入プロセス
(PAD) コスト面やタイムパフォーマンスはどう見られていますか?
(小松) ナビゲーションの価格は一見高く感じられるかもしれませんが、他社製品と比較した際、価格面で優位性があるとお客様から評価いただいています。 自社でナビゲーションを開発しようとすると、結果的に@mobiを使った方がコストパフォーマンスが良い、という評価を受けることが多いです。
(PAD) 導入から運用開始までの期間はいかがですか?
(小松) 2〜3回デモを行い、評価機を導入いただいてから1〜2年で本格運用に入るケースが多いです。 工場のライン変更のタイミングで検討されることが多いですね。
(PAD) 「買い切り」という提供形態についてはどうですか?
(小松) 優位性があると思います。サブスクリプション型が多い中、お客様に提案した際に、予算枠に収めやすいと好評です。
要望対応とアップデートのスピード
(PAD) 顧客からの要望対応についてはどうでしょう?
(小松) 正直、非常に速いと感じています。例えば「バーチャルライントレース機能」は半年ほどで反映されましたし、 フットプリント(車体のサイズ・形状情報)の設定もお願いしたら次回アップデートでGUIで設定できるようになっていて助かりました。
(PAD) 我々も受託業務でソフトウェアをライセンスで使うことが多いのですが、改善要望出しても「対応できません」と突っぱねられることがあります。 自分たちが世に送り出す@mobiは、そうならないよう、ユーザーの声に寄り添った開発をしたいと考えています。
導入台数と@fleetへの期待
(PAD) 実際の導入規模はどのくらいでしょう?
(小松) 工程間搬送が多く、1ラインに5〜10台が平均です。大規模なラインでは40〜50台、倉庫では100台規模になることもあります。
(PAD) なるほど、それだけの台数を動かすとなるとフリートマネジメントシステム(FMS)が必要ですね。@fleetについてはいかがでしょう? 導入の予算権限のある方がFMSに期待するものと、現場の方がほしいFMSは実は違うのではないかと思っているのですが。
※ @fleet: @mobiのフリートマネジメントシステム。複数台のAMRを協調動作させることができる。2025年の秋商品化予定。
(小松) はい、そのとおりですね。責任者の方は機能の多さを重視されますが、現場の方は現場適用の良さとか、柔軟に対応できるかが重要で、機能の多さも目指しつつ、 使い勝手も良くしていく必要があります。
そういう意味で、@fleet は現場寄りの視点で作られているなと思います。 Ver1は工程間搬送に向いており、Ver2にはさらに大規模管理に対応することを期待しています。 GUIやインタフェースの改善も楽しみにしています。
今後の期待と市場動向
(PAD) 今後の市場の伸びや導入の壁についてはどう見られていますか?
(小松) 工程間搬送も含め、全体的に伸びていくと思います。特にフォークリフトの自動化は喫緊の課題です。運転手不足や荷受けの滞留が深刻で、ここを自動化できれば導入は一気に進むはずです。
また、差動二輪だけでなく、牽引やターンテーブル方式にも対応していく必要があります。すべての「運ぶ」を自動化するためには、より多様な要件に応えられる柔軟さが不可欠です。
(PAD) 最後に、@mobi開発チームへ一言いただけますか?
(小松) この2年半で@mobiのおかげで我々のビジネスは大きく伸びました。とても感謝しています。
今後も緊密に連携していき、AGV/AMRの開発でお困りのお客様に良いご提案が出来るよう、引き続きご協力をお願いしたいです。今後も協力しながら市場を広げていければと思います。
(PAD) どうもありがとうございました。
インタビューを終えて
今回のインタビューでは、「現場の人がすぐに使える」ことが自律搬送導入の決め手であることが浮き彫りになりました。ROSや高度な技術が必要とされる分野において、ラダー言語や直感的なGUIを通じて現場に馴染む@mobiは、まさに「現場起点」のソリューションといえます。
自社の工程間搬送の自動化を検討したい」 「AMRに興味がある」など、詳しく知りたい方はぜひお問い合わせください。
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